雑記

元書店員で元ラノベ担当による、ラノベの品揃えとラノベの配本とそれに関する話

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角川ラノベの独自の特約店名

ラノベ担当者しか知らない情報だと思いますが、

角川ラノベの特約店には独自の名前があります。

私が担当をしていた当時の情報ですので、注意して下さい。

その名前は

電撃文庫の特約店を

電撃組

ファンタジア文庫の特約店を

ファンタジア組

といい、

残りの角川スニーカー文庫、MF文庫J、ファミ通文庫も、

そのまま名前の後ろに「組」がついていたと思います。

「~組」は全国で売り上げ上位の書店だけが入れる、選ばれし書店です(笑)

角川ラノベの新刊配本は、

この「~組」に入らないと入荷が少ない、全く無いという状態になります。

これとは別に単行本サイズのラノベの「新文芸」というジャンルの特約名があります。

新文芸とは

ドラゴンノベルス、カドカワBOOKS、電撃の新文芸、MFブックス

などの単行本サイズのラノベのレーベルの事を言います。

ボカロ系だけ、どうだったか忘れました。

角川ラノベの特約店の基準の話

特約店になる難しさの順番は男性向けレーベルだけですが

  1. ドラゴンブック
  2. 電撃文庫
  3. MF文庫J
  4. ファンタジア文庫
  5. スニーカー文庫
  6. ファミ通文庫
  7. 新文芸

あくまで、私が思った難しさです。

具体的な数字は言えませんが、特約店に入るためには販売数の基準があります。

ちなみに一年毎に審査があり、その年によって基準が変動するようです。

余談ですが、昔は準特約という、

少し入荷を優遇してくれるシステムがあったのですが、現在は無いようです(多分ですが)

冊数的に多く売らないと入れないのが、

電撃文庫、MF文庫J、ファンタジア文庫、新文芸です。

この中で1位のドラゴンブックですが、実は冊数は一番売らなくていいのですが、

漫画、ラノベ専門店以外は特約店に入るのは難しいです。

その理由がドラゴンブックがTRPGというジャンルのせいです。

要はマニアックなジャンルなのです。

詳しくしりたい人は↓をクリックでウィキペディアに飛びます。

富士見ドラゴンブック

私も担当をしていて、このレーベルだけは一度は特約店になれましたが、すぐにダメになりました。

次に2位の電撃文庫ですが、

文庫ラノベの中で一番売らないといけないレーベルなので2番目にしました。

ひと昔ほど前だと、何も考えずに

「とある」「SAO」「俺妹」あたりを売っていればあまり苦労せずに入れたと思います。

まだ文庫ラノベにおいては一番売れていると思うレーベルですが、

それでも現在は厳しいと思います。

その販売数の基準ですが、

専門店や大型店は何の心配もしなくても良い基準ですが、

中型店と小規模の書店は毎年、必死にならないと特約店を外されるくらいの基準です。

私も特約店に入ってから毎年、冷や冷やしていました。

経験上ですが、この電撃文庫の特約店にすら入れない書店は、

新文芸を除いた、他のレーベルの特約店に入るのはまず無理だと思います。

私の経験上の話ですので軽く聞く程度にしてださい。

次に販売数の基準が多いのは、

MF文庫Jとファンタジア文庫です。

大体、電撃文庫の半分から三分の二ほどです。

MF文庫Jはまだ人気作がちょいちょいあるので、頑張れば何とかなると思います。

ファンタジア文庫は、純粋ラノベだけだと難しいかもしれません。

しかし最近は、なろう系のweb小説が原作の作品がたくさん出ているので、

そこをメインにすれば大丈夫でしょう。

スニーカー文庫、ファミ通文庫は↑のレーベル達が売れている店であれば、心配はないでしょう。

最後の新文芸ですが

今はまだ、なろう系のweb小説がブーム中だと思いますので、

人気作を置けば心配はいらないと思います。

新文芸のジャンルが売れない店は、ラノべの特約店はとても難しいでしょう。

理由は、まだ伸びているはずの新文芸のジャンルすら売れないなら、

純粋ラノベは難しいんじゃないか?という簡単な理由からです。

女性向けレーベルはどれも、そこまで厳しくはないですが、

店の客層次第で全く売れない店が多いと思います。

角川以外のレーベルの話

角川以外の他のレーベルは基準が分からなかったり、指定配本(事前発注)が多いです。

今から書くのは男性向けレーベルの話です。

ホビージャパン

HJ文庫はランク制で店の販売数を元に新刊が入荷します。

感覚としては、角川よりはだいぶ緩かったです。

HJノベルスは指定配本で事前に入荷数を書店で決めれます。

もちろん、その店の今までの販売数を基準にするので希望数が入荷するとは限りません。

講談社

講談社ラノベ文庫は不明ですが販売数を元に入荷数を決めている思います。

正直、よく残っているなぁと思うレーベルです。

私が思いつく人気作は

「終わりのセラフ」「異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術」くらいです。

私の感覚では長くはもたないと思います。

次に単行本サイズのKラノベブックスがあります。

こちらも詳しくは不明ですが同じく販売数を元に、入荷数を決めていると思います。

作品はほぼ、なろう系のweb小説で私の感覚では、

マニア向け、チート、エロ要素強めの作品が多いと思います。

しかし、いくつか面白いのはありますので、その内アニメ化する作品も出ると予想しています。

レジェンドノベルスも販売数を元に入荷数が決まります。

まだ新しいレーベルで、web小説の原作がほとんどで、

作品の読者層は30代以上向けが多い印象です。

星海社FICTIONSも同じく販売数次第だと思います。

web系の作品はありますがそれ以外もあり、作品全体が年齢層高めの大人向けです。

講談社BOXも販売数を元に入荷数が決まると思われます。

講談社BOXは、

まだ発行されているか、よく分かりません。

西尾維新氏の作品が終わる時が、このレーベルの終わる時かもしれません。

LINE

LINE文庫エッジ、2019年創刊の新しいレーベル。

創刊時、書店は辞めていたので不明。

SBクリエイティブ

ソフトバンクグループです。

GA文庫はランク制の指定配本です。

もちろん、販売数を元に入荷数を決めています。

記憶が曖昧ですが、S~DかEランクまでです。

GAノベルは単行本サイズでは、なろう系のweb小説がほとんどです。

同じくランク制の指定配本。

人気作品が揃っていて、これからまだまだ伸びそうなレーベル。

ツギクルブックスも同じく指定配本制でした。

なろう系のweb小説が多く、男性向け、女性向けが混合しています。

一般ラノベ層には、あまり知られていないかもしれません。

ポニーキャニオン

基準は不明。

一応まだあるようですが、風前の灯火だと思います。

小学館

ガガガ文庫は基準があるのか不明ですが、

角川の特約店のような感じで販売数を元に決めていると思います。

web系の原作を使わずに出版しているレーベルで、よく頑張っていると思います。

ガガガブックスは単行本サイズです。

ガガガ文庫と同じ基準だと思います。

まだ新しいレーベルでなろう系のweb小説を販売していますが、

作品がかなり少ないので危うく見えます。

集英社

ダッシュエックス文庫は詳しい入荷基準は不明で、販売数を元に決めていると思います。

近年はなろう系のweb小説が多く、エロ、チートのジャンルに偏っている傾向。

JUMP j-BOOKSは主に週刊と月刊のジャンプの作品が、

小説化するパターンがほとんどです。

入荷基準は不明です。

オーバーラップ

オーバーラップ文庫は指定配本制でした。

販売数を上げれば上げるほど、新刊の入荷数を上げれると思います。

オーバーラップノベルスも同じく指定配本制でした。

この二つのレーベルはなろう系のweb小説が中心ですが、面白い作品がとても多く、

web小説ブームが終わるまでは、かなり売上が上がるレーベルだと思います。

アニメ化も今後かなり増えると予想しています。

主婦の友インフォス

ヒーロー文庫は指定配本制でした。

私が担当していた当時、ほぼ希望数が入荷していたので楽でした。

web小説が原作の作品がほとんどでちょくちょく、アニメ化作品があります。

面白いのにあまり知られていない作品が多い印象で、

認知されればドカンと人気が出ると思います。

双葉社

モンスター文庫は基準は不明ですが、特約店に近い感じで売っていれば、新刊が入荷します。

Mノベルス、Mノベルスfも同じです。

モンスター文庫、Mノベルスが男性向け、Mノベルスfが女性向けです。

ほぼ全ての種類がなろう系のweb小説で、

私の感覚ではダークホースの面白い作品がゴロゴロありますが、あまり知られていないのが、とても残念です。

ティー・オーエンタテインメント

TOブックスは指定配本制でした。

なろう系のweb小説が中心で、男性向け、女性向け作品が混合です。

最近はアニメ化作品が出てきましたが、それでも飛び抜けた看板作品は無く、

中堅クラスの作品がたくさんある印象です。

アース・スター エンターテイメント

アース・スターノベルは指定配本制でした。

なろう系のweb小説が中心のレーベルで、全体的な雰囲気は地味な感じがします。

中堅クラスの作品がゴロゴロしている感じです。

アルファポリス

アルファポリスは指定配本制でした。

ほとんどが自社で提供しているweb連載から出版している事が多いです。

面白い作品がたくさんあり、人気が爆発するその日を待ちわびています。

角川のweb系作品に対抗しうる唯一の会社と言っても過言ではないと、

私は思っています。

マイクロマガジン社

GCノベルズは指定配本制でした。

看板作品は「転生したらスライムだった件」です。人気爆発でしたね。

私の感覚では「転スラ」のような超人気作品になりそうなものは、現時点ではありませんが、

アニメ化出来るレベルの作品はゴロゴロある印象です

宝島社

販売数による入荷だと思います。

ノベルスはなろう系のweb小説で細々と生き残っている印象です。

おそらく長くはもたないと思います。

買切商品

大まかに言うと、書店に置いてある商品のほとんどは、

ある一定期間以内なら返品出来ます

しかし、中には返品が出来ない種類の商品があります。

それが買切商品というものです。

なぜ、この話を書いたかというと、

ある種類のラノベの商品が一般書店に置いていない、または少ない理由

を紹介するためです。

それは、ラノベのドラマCD付やDVD付の商品、

小冊子付商品やその他のグッズ付商品です。

一般書店のラノベコーナーでは、この買切商品はほとんど置いていないでしょう。

その理由は当たり前ですが、

売れ残りのリスクが高く、返品出来ない、値下げが出来ないのが理由です。

ですので、一般の書店で特典付のラノベが売っていない事に怒らないで欲しいです。

特典付が欲しい人はぜひ、書店で予約をして購入して下さい。

注意して欲しいのは、

買切商品の予約は、料金が先払い(大体が)で、

キャンセルは基本出来ない事です。

特約店に入った後の話

私がラノベ担当していた最後の方は、そこまで大きいラノベコーナーでは無いにも関わらず、

全ラノベレーベルの8割くらい特約店に入っていて、

それに関連する漫画化作品も担当していました。

あそこまで、充実させるのに長い年月をかけたのを懐かしく感じます。

少し裏話ですが、

実は角川のラノベレーベルとGA文庫は毎月、

全国の特約店の中で、

自分の店舗が何位か分かるランキングと、

売れた冊数が分かり

見る事が出来ました。

ランキングと売上が目に見えるというのは、

モチベーションの持続になっていて、とても楽しかったです。

全てのレーベルがやってくれたら良いのになぁと、ずっと思っていました。

その後特約店になってからは、

毎年特約店から外れないように日々、売れそうな商品を考えながら商品を置いていました。

担当をしていたある日、分かった事がありました。

専門店は別として、それは

ラノベコーナーが広ければ良いというものでもない

と言う事と

ラノベというジャンルが好きではないと、続けるのが難しい

と言う事です。

例え小さなラノベコーナーでも、ある程度のデータと愛情を持って育てれば、

固定のお客さんが付き買ってくれるようになるはずです。

もちろん、客層の把握は絶対必要です。

もし、小規模や中規模のラノベ担当をしている人が、この記事を見ていたら言いたいのは

当たり前の事を当たり前にする

と言う事と

固定のお客さんが付くまでには、時間がかかるので根気よく続けて下さい。

と言う事です。

当たり前の事と言うのは、新刊に合わせての既刊の仕入れなどです。

もちろん、作品により判断します。

専門店や大型店では既刊が常時置いているため、あまり心配しなくて良いです。

しかし、小規模な店では既刊の売り切れや関連商品を置いていないなど、

小さな事が影響する事が結構あります。

そこらへんの仕入れるかの判断は、

ラノベの作品自体を知っているか知らないかで大きく変わります。

一度他のジャンルの担当の人にラノベの事が分かるか聞いたのですが、

当然、ラノベに興味がない人なので、全く分からないと言っていました。

ですので、ラノベ自体に興味が無い人が担当やっているラノベコーナーは、

ひどい事になっている可能性が高いです。

余談

他の書店がどうか知りませんが、

私が働いていた当時の書店のラノベ発注作業に関する話です。

しかも昭和ではなく、平成の後半の時の話です。

ラノベの7割くらいのレーベルはネットで発注出来るのですが、

それ以外はなんとFAXでの発注がメインなのです。

もはや、一般市民層では絶滅したと言っても過言ではない機械が、

書店業界では、まだ普通に使われています。

そして、なんと昭和時代には大活躍だったであろう、

郵送による発注も現在生き残っています。

万が一、電気が使えなくなった時用に残しているのでしょうか?

その理由は私は知りません。

特約店システムのラノベレーベル場合、新刊は発売日になれば勝手に入荷するので良いのですが、

それ以外の指定配本(事前発注)によるレーベルの新刊の場合、

毎月新刊の発注書類が送られてきます。

その書類と共に、既刊の注文書とその他色々な物が送られてきます。

たくさんのレーベルから毎月送られてくるので、

定期的に整理しないと、すぐに書類でいっぱいになります。

私はいつも思っていました。

金と資源の無駄使いやなぁと。

それと、

ネット発注に対応していないレーベルは、どういう神経してんねん!」と。

全国の特約店の書店に送っているとなると、相当な紙の無駄使いです。

しかしまだ、角川だけはマシだったと伝えておきます。

注文書の話は出版社側の話でしたが、

書店業界も一部の業務やシステムが、昭和や平成初期で時代が止まっていたり、

無駄が多かったりします。

それでいて書籍は利益率2割と言われている、超薄利多売業界です。

「そりゃあ、書店は潰れるのも当たり前やん」と誰もが思います。

それに、まだまだ無駄な事はいっぱいあるので、

近い将来おそらく書店は、専門店、大型店以外は、ほぼ潰れると私は思っています。

それに新型コロナが、とどめを差したかもしれません。

まとめ

いかがでしたか?

ラノベ担当者しか知りえない情報がそこそこあったと思います。

本当はもっと短い記事の予定だったのですが、かなり長くなってしまいました。

実はさらに細かく言うと、

ラノベ寄りの一般文庫と一般向け単行本というジャンルがあるのですが、

一応ラノベでは無いらしいので書いていません。

最初にも書きましたが、

働いていた当時の情報ですので今は違う可能性があります

ですので話半分で見て下さい。

web小説のせいで純粋ラノベ読んでないなぁ‥‥

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