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こんにちは、水瓶座男のTKです。
今回はラノベについての話です。
ひと昔より以前は、
ラノベと言えば、主に文庫サイズ、または新書サイズあたりがそう呼ばれていたと思います。
しかし、近年はなろう系などのweb小説が台頭し、
いわゆる単行本サイズのラノベが増えてきました。
ですので、現在は大きな括りでラノベと言うと、
文庫本サイズ、新書サイズ、単行本サイズの事を指すと思います。
大きな括りでの意味は、
おそらく一般の認識では、
単行本サイズもラノベになると思うのですが、
書店によっては呼び方が違う場合があると言う事です。
それは、
単行本サイズのラノベの事を
新文芸(角川が言い出した)
またはライト文芸と言う書店が多々あります。
ですので、もしそこそこの大きい書店でラノベのコーナーを探して、
なろう系のweb小説、「化物語」を発行している講談社BOXなどのラノベが見つからない時は、
新文芸またはライト文芸コーナーに置いてある可能性があるので、根気よく探してみて下さい。
それともう一つ注意する事は、
ラノベ軽視書店、
ラノベ担当者が適当か何も知らない、
ラノベ担当者が新人で何も分からない場合、
単行本サイズのラノベを一般の
文芸書と言われるコーナーに置いてある可能性があります。
そんなヒドイ書店はあんまり無いと思いますので、頭の片隅に入れる程度で。
専門店はもちろん、ラノベ担当者のほとんどが愛に溢れていますので、ほぼ100%ありえません。
なぜ、こんな事を知っているかと言うと、
実は私はその昔、某書店(中型くらい)でライトノベルの担当をやっていました。
本題ですが、今回はその時のラノベの配本の話とそれにまつわる話をしようと思います。
それと、これから書く話は、
私が働いていた当時の話ですので、
今は変わっている可能性がある事を前提に見て下さい。
かなりの長文ですので、お茶やコーヒーでも飲みながら見て下さい。
ちなみに普段このブログはweb小説のオススメを中心に紹介しています。
興味ある人は読んでみて下さい。
2021年8月 追記
この記事の本文の文字が多かったので、ページを分割しました。
2ページあります。
配本
そもそも配本とは何なのかについてですが、その前に取次の説明をする必要があります。
取次(正確には出版取次の事)とは、
簡単に言うと全国の本屋さんに対して、どれくらいの本を配るのかを決める会社です。
そして、その取次が、
どれくらいの本を配るのかを決める作業の事を配本と言います。
ラノベの配本と品揃え
分かる人には分かってもらえるのですが、
ちょっと昔まで町の本屋、中型規模の書店では、ラノベがほとんど置いていない、
全く置いていないと言う、品揃えが悪い状況が多々ありました。
この記事を書いている時点で、
本を読まない人や、書籍の電子化がかなり進んでいて、
町の本屋、中型規模の書店を探すのは、もはや不可能になりつつあります。
元々、物凄い速度で減少していた本屋は、ここ近年の新型コロナの影響で、
さらに加速しているでしょう。
ホントに近い将来、大型書店しか無いという状況になると、予測は出来ます。
話が少しそれましたが、その町の本屋、中型規模の書店にラノベが置いていない理由の多くは、
ラノベ独自の新刊配本システムのせいなのです。
そのラノベの新刊の配本というのは、
大体が店頭で実際に売れた数を元に次回の配本を決めるというシステムなのです。
ただし、専門店、超大型書店と大型書店は、また別かもしれません。
あくまで一般書店のラノベの新刊配本においての話です。
頭の回転が速い人は気づいたかもしれませんが、
「売れた数を元に」です。
ですので、今まで全くラノベを売っていない町の小さな書店、
それまでラノベをあまり売っていなかった中型書店には、永遠に入荷しないという事です。
これはまるで、貧乏人は一生貧乏人と同じ感じですよね。
この永遠ゼロシステムから抜け出す方法はただ一つ、
既刊のラノベを売る事だけです。
そうです、一縷の望みはあったのです。
しかし、ここにも罠があります。
それは、その既刊のラノベすら入荷しない可能性があると言う事です。
はい、ゲームオーバーですよね。
どういう事かと言うと、
その既刊すらも専門店、超大型書店、大型書店、
その次はしっかり売っている書店、そこそこ売っている書店の順で優先されるのです。
冷静に考えると、出版社側の視点だと、とても現実的で優秀なシステムですよね。
売れない所に出しても無駄になるので。
しかし、これからラノベを売りたいと思っている書店側に立つと悪魔のシステムなのです。
その立場の人には申し訳ないですが、端から見るとちょっと面白いですよね。
入荷の確率を下げるもう一つの要因と取次の意味
実はさらに入荷の確率を下げるかもしれない要因があります。
今から言う事は、何も知らない一般書店のラノベ新人担当者に役立つかもしれない情報です。
それは、取次だけに発注をしていると永遠に入荷しない可能性があると言う事です。
どういう事かと言うと、発注の流れとして
・取次→書店入荷
・出版社→取次→書店入荷
のパターンがあります。
全ての書店は、あらゆる本をどういう発注をしても取次を絶対に通すのです。
ただし、専門店だけはどういうシステムか分からないので、違うかもしれません。
話を戻しますが、この構図だけ見ると、取次に直接頼んだ方が出版社を介さない分早いと思いますよね?
しかし、この取次も結局、売れている書店から配本を優先させるため弱小ラノベ書店は、
発注しても新刊ラノベは入荷しない可能性が高いのです。
さらにヒドいのは発注してから一ヶ月後に来る事があると言う事です。
その時はもう新刊では無いので、発注したラノベのほとんどが在庫になり大損です。
この話は出版社に直接発注しても、売れている書店から配本を優先させるので同じように見えます。
が、実は少し違っていて直接発注しているため、
万が一出版社に在庫が残っていた場合、取次がはじく事は無いので、わずかに入荷の可能性があります。
それに取次が抱えている在庫数と、
出版社が抱えている在庫数には差があるはずなので、
出版社に直接発注する方が、何%かマシと言う話です。
入荷すればラッキーです。
しかし、取次発注で「???」な事があります。
これは詳細は聞いていないので間違っているかもしれませんが、
さっきの発注の構図、実は取次に発注した所で、取次は出版社に発注しているはずなので意味が無いかもしれないのです。
要するに書店から取次に発注をすると
取次→取次が出版社に発注→取次→書店入荷
かもしれないのです。
だとすると、取次に発注すると余計に時間かかるわ、来ない可能性が高いわで
「取次なんていらんやろっ!」て思いますよね。
私は今でも「取次いらんやろ」って思っているのですが、
実は取次には一応重要な役割があるのです。
それは簡単に言うと
・委託販売制度と本を返品出来るようにするシステム
・出版社からの仕入や書店に送る本の量を決める配本の適正化
その他、書店が直にすると大変な仕事のほとんどを代わりにやっています。
細かい取次の役割を知りたい人は、すみませんがググって下さい。
様々な重要な役割がある取次ですが、
ラノベの配本の話になると(新しく新刊ラノベを仕入れたい書店の場合)
ポンコツで役立たずになります。
実は私も‥‥
今はこうして私も悪魔のシステムだと笑っている私ですが、実は私も弱小ラノベ書店側だったのです。
だから、少し気持ちが分かります。
少しの理由は、幸運な事に私が担当した当時、
まだ「涼宮ハルヒ」「とある魔術の禁書目録」が流行った後くらいの、ラノベのピーク真っ只中でした。
その頃は出版社もかなり多く増刷してくれていて、欲しい既刊は割とすぐに入荷してくれました。
余談ですが、一つ思い出したので書きます。
担当当時、まだ「ソードアート・オンライン」が流行る前だったのですが、
私は当時ラノベを割と読んでいて、先見の明で「ソードアート・オンライン」の流行を予測し、アニメが始まる前に大量に発注して大成功しました。
懐かしい思い出です。
その時大成功はしましたが、一応それまで全くラノベを売っていない書店で、
そこからのラノベ担当だったので、新刊の配本を付けるまでは、それなりに苦労しました。
少し注意事項
今まで書いてきた事も書店や出版関係者以外の一般の人は、知らない事が多かったと思います。
ここからは先はさらに深く、ラノベ担当者、書店関係者、出版関係者しか知らない情報を書きます。
正直どこまで書いて良いか分かりません。
一応具体的な数字などは、明らかにダメだと思うので書きませんが、それ以外は書きます。
もし、ダメだった場合、削除をする可能性があるので、ご了承下さい。
それではラノベの新刊配本の話に戻ります。
実は配本はレーベル別
ラノベの新刊配本
実は‥‥
出版社別で、さらに細かく言うとレーベル別なのです。
「なんや当たり前やん!」と思う人もいるでしょうが、ラノベ担当者ではないアナタは事の大変さ全然分かっていません。
それはレーベルの数です。
web小説の単行本などもラノベとして考えます。
レーベルは40くらいあります(2017~2018年ぐらいの話)
そのレーベル内訳は
ファンタジア文庫
ドラゴンブック
MF文庫J
スニーカー文庫
HJ文庫
講談社ラノベ文庫
LINE文庫エッジ
電撃文庫
GA文庫
ぽにきゃんBOOKSライトノベル
ガガガ文庫
ダッシュエックス文庫
オーバーラップ文庫
ファミ通文庫
ヒーロー文庫
モンスター文庫
ドラゴンノベルス
レジェンドノベルス
カドカワBOOKS
TOブックス
アース・スターノベル
星海社FICTIONS
電撃の新文芸
朝日ノベルズ
アルファポリス
MFブックス
GCノベルズ
宝島社のノベル
講談社BOX
JUMP j-BOOKS
コバルト文庫
角川ビーンズ文庫
X文庫ホワイトハート
ビーズログ文庫
一迅社文庫アイリス
ウィングス文庫
アリアンローズ
レジーナブックス
PASH!ブックス
実はまだもう少しあります。
どうですか?
小さい規模の書店は仕入れるレーベルをかなり絞りますが、
中規模以上のラノベコーナーを持つ担当者はこれらのレーベルの仕入れと返品を全て担当します。
さらに近年はなろう系のweb小説は漫画化が多いので、漫画も一緒に担当する書店も多いでしょう。
1人の人が担当するとは限りませんが、専門店、大型店以外の所は、1人の可能性は高いのではないでしょうか?
大変そうに書きましたが、実は中型店以上のコミック担当者はラノベ担当者と比べ者にならないくらい量が多く大変です。
特約店の新刊配本と指定配本
実は新刊の配本と言っても、二つの種類があります。
それは特約店の新刊配本と指定配本です。
まず最初に特約店とはなんぞや?と思っている人が多いと思うので説明します。
ある出版社から出版される書籍、漫画、ラノベなどの新刊配本、追加発注が優遇される書店
の事です。
その中でラノベの特約店になると、ラノベの新刊配本と追加発注が優遇されるようになります。
ラノベの特約店の条件はとてもシンプルで、
ラノベをめちゃくちゃ売っている店がなれます。
ですので基本的に専門店、大型書店の新刊配本がアホほど多いのは、
それだけ売っている、または売れる見込みがかなり高いからと言う、当たり前の理由です。
逆もまた然りです。
まだ小規模書店はラノベを置かないと言う選択肢も選べます。
そこそこのラノベコーナーがあり、今から頑張って特約店になろうとしている店が一番大変です。
次に指定配本という配本のシステムがあります。
書店側が出版社にあらかじめ入荷したい本の数を希望して提出するシステム
の事です。
正確に言うと、事前発注による指定配本ですかね。
一見、「なんや、こんなシステムがあるなら新刊のラノベは全部これにしたらええやん」と思う人もいるかもしれません。
しかし、書店側が欲しい入荷希望数を提示しても来ない可能性があります。
なぜかと言うと、その書店が提出した希望数を入荷させるかの判断は、
当たり前ですが出版社が決めるからです。
出版社は発注を受けるとおそらく、
今までに自分達のレーベルのラノベをその店舗がどれくらい売っているのかを元に
入荷させるかの判断をするはずです。
ですので、その書店が今までラノベを売っていない店だと、ほぼ100%入荷する事はありません。
先も書きましたが、これは出版社側に立つと、当たり前の事で何もおかしい所はありません。
しかし、ラノベが売れる見込みがある小規模の書店、中規模の書店が新規参入したいとなると要塞の如き壁があるのです。
ですので、もし現在残っている小規模の書店、中規模の書店で、
ラノベコーナーがそこそこあるのに、新刊が少ない場合、文句を言わずに許してあげて下さい。
そして、その書店のラノベコーナーもしくは、書店自体が潰れて欲しくないなら、
その書店で既刊を買ってあげて下さい。
あなたが、ネットで本を買う度に、ラノベコーナーだけではなく、
全国の書店自体が閉店に近づきます。
少し話を戻しますが
もし仮に全ての書籍の新刊の発注を指定配本だけすると、
毎月何万点以上も出る書籍を捌ききれる訳がありません。
ですので、新刊書籍のほとんどは特約店のような制度で、
一部の新刊は指定配本という感じです。
ラノベ特約店に入ればいい
ここまで色々書きましたが、結局、特約店にさえ入れば、その後の売り上げがよほど悪くない限り外されません。
ですので、特約店に入れば良いのです。
特約店に入るにはただ一つ、ラノベの売上を上げるのです。
「それが出来ないから苦労するんじゃ!」という声が聞こえてきますね(笑)
そこでラノベの特約店に入るための最初に乗り越える壁は
まず角川グループが出版しているラノベを売って特約店に入るです。
この理由はラノベのシェアの半分以上が角川だからです。
代表例でいうと
「涼宮ハルヒ」「とある魔術の禁書目録」「ソードアート・オンライン」「オーバーロード」など。
数々の大人気ラノベは角川である事が多いので、
ラノベの売上を上げたければ、まずは角川のラノベを売れと言う事になります。
2020年3月時点の角川が出している現役ラノベレーベルは
男性向けが
MF文庫J、ファンタジア文庫、ドラゴンブック、角川スニーカー文庫、電撃文庫、ファミ通文庫、ドラゴンノベルス、カドカワBOOKS、電撃の新文芸、MFブックス
です。もう少しあるかもしれません。
女性向けが
角川ビーンズ文庫、ビーズログ文庫
です。(多分ですが‥‥すみません女性向けラノベは、把握出来てません)
私はweb小説が原作ではない文庫サイズのラノベの事を
勝手に「純粋ラノベ」と言っています。
ひと昔前までなら、純粋ラノベの筆頭である電撃文庫さえ売れば、
他の角川のレーベルも追随して売れるという状況がありました。
ちなみにこれは私が担当していた当時の書店の話です。
しかし、現在(2020年)は純粋ラノベの売上はかなり下がっていると思います。
あくまで私の分析ですが、現在、文庫サイズのラノベがまだ生き残っている理由は、
web小説が原作の作品が発売されているためと思っています。
ですので、今からラノベの特約店に新規参入したい書店は、
web小説が原作の作品を中心に売る事が効率の良い方法だと思います。
ただし、書店に来店するお客さんの年齢層で、また違ってきますので注意した方が良いです。